五.「苦海浄土」という 書物
沖縄返還の支援カンパをしても、署名をしても、悲しいかな自分自身の問題として取り組むには余りにも漠然としていたではないか。何故そうなるのかを、その矛盾点を理解し得たとしても、とても運動と言うか行動に直結するものは残念ながら生まれなかった。もっと身近な問題で自分自身がその気になられば・・・ こんな討論から公害がテーマに決まった。不幸中の幸いと言うか、現在熊本県は水俣病という公害病を抱えている。資料を探せば日本中で一番手に入り易い状態にあるではないか。
岩本が「水俣病の資料を熊本総評から借りてこよう」この一言で決定した。彼が資料を手に入れて私が纏めて、来週の定例会に報告することにした。曲は公害を取り扱った例が身近なところに見つからず、加来と私の二人で作ることにした。つまり二人の冒険が始まったのだ。その週の金曜日に岩本から手にした資料は次のようなものだった。
・ 水俣病は解決したか・・・水俣病問題共同デスク編
(30円)
・ 社会問題月報(Vol9, No12)・・・ 社会問題研究所
(180円)
・ 「告発」・・・水俣病を告発する会 (30円)
・ 企業の責任(チッソの不法行為)・・・水俣病研究会
(非900円)
・ 水俣病・・・水俣病研究会資料、富田八郎著 (非売
品)
この中で最も私を考えさせたのは「水俣病は解決したか」というパンフレットであった。これは新聞記者の人たちが集まって出版したものらしく、水俣病発生当時に患者に冷たかった水俣市民の反省を主に捉えていた。私たちも同じ熊本県に住みながら疎かにしていたことを恥じて、もっと自分の環境を良くするものとして取り組まれなければならないのではないか・・・と訴えるものであった。
市内合唱団の常連が読むには手に入った部数が足らず、私は翌日熊本日日新聞社社会部へ電話を入れた。記者たちの発行なので、もしかしたら残部を手に入れられるかもしれないと思ったからだ。だが全然知らないという返事だけだった。以前書店で見つけて買っていた本があった。石牟礼道子氏の「苦海浄土」だ。熊本にいて水俣病を 知らないのは何だか恥ずかしいと思って買ったまま読む機会を失くして本棚に立てていた。私は日曜日一日かかって読みあげた。