01:新教育の課題
ここで紹介しました内容は、『小学校学習指導要領解説』総則編(平成11年5月,文部省,東京書籍株式会社発行)
の中の、第1章総説から私個人が要点を抜き出したものです。
学習参考書を販売している書店や大きな書店において、誰でも安価(70円+税)で購入することが出来ます。
ぜひ、手に入れて熟読してください。又、中学校に関しても同様に発行されています。
また、「学びのすすめ」(文部科学省発出)についても、私個人が要点を抜き出したものです。
詳細については、関係資料原本をご覧下さい。
このホームページに記述した内容については、メールなどで直接私へおたずね下さい。
(1) これまでの教育現状と政策
1 受験戦争の過熱化 2 いじめや不登校問題 3 学校外での社会体験不足 などの課題を認識し、
21世紀に向けて、わが国の社会、国際化、情報化、科学技術の発展、環境問題への関心の高まり、 高齢化や
少子化など様々な面で大きく変化していることを踏まえた、新しい時代の教育のあり方が問われて いた。
・平成08年07月 中央教育審議会第一次答申概要
≪〔ゆとり〕の中で〔生きる力〕の育成≫を基本とし、
〇 教育内容の厳選と基礎や基本の徹底を図ること
〇 一人一人の個性を生かすための教育を推進すること
〇 豊かな人間性とたくましい身体を育むための教育を改善すること
〇 横断的・相互的な指導を推進するため『総合的な学習の時間』を設けること
〇 完全学校週五日制を導入すること
・平成08年08月 教育課程審議会に対し「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校
及び養護学校の教育課程の基準の改善について」文部大臣から諮問を行った。
・平成10年07月 教育課程審議会の答申概要
〇 幼児児童生徒の実態
〇 教育課程実施の状況
〇 社会の変化などを踏まえて、完全学校週五日制のもと、
〔ゆとり〕の中で「特色ある教育」を展開し、
幼児児童生徒に〔生きる力〕を育成することを基本的なねらいとし、
次ぎの方針に基づき改訂することを提言した。
(1) 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。
ボランテイア活動、社会生活上のルール指導の工夫、障害者との交流などに注目。
(2) 自ら学び、自ら考える力を育成すること。
多くの知識を教え込む教育から、児童が自ら学び考える教育へ転換。
問題解決的な学習の充実(例:国語では討論)
(3) ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎や基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を
充実 すること。
興味や関心に応じた学習への主体的な取組み、指導体制の工夫。
(4) 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること。
児童一人ひとりの個性を生かす教育、特色ある教育活動の展開。
※ これらのねらいに基づき教育課程の編成、授業時数、各教科等の内容の改善方針が示された。
・平成10年12月14日 学校教育法施行規則を改正すると共に、完全学校週五日制 の下での教育
課程の基準である新しい幼稚園教育要領、小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を告示した。
・平成14年04月01日 小中学校で全面実施となる。
(2) 改訂の基本方針(弱点)
≪小学校の場合≫
1 文章表現力や論理的な思考力は、計算の技能や文章の読み取りなどに比べてやや弱い。
2 諸外国と比較すると、各教科を好きな児童は多くない。
3 多角的なものの見方や考え方が十分でない。
4 道徳の時間確保が不十分で道徳に興味や関心を持つ児童の割合は上学年ほど低下している。
(3) 改訂の要点
≪小学校の場合≫
1 第3学年以上の各学年に『総合的な学習の時間』を創設する。
2 完全週五日制に伴い年間70単位時間(第1学年は68)週当たり2単位時間減少する。
3 『総合的な学習の時間』は、第3,4学年は105時数、第5,6学年は110時数設ける。
4 クラブ活動は「学級活動に充てる」としたが年間を通じ各学校において適切な授業時数
を配当すること。
(4) 『総合的な学習の時間』の取扱い
≪小学校の場合≫
1 各学校が地域や学校、児童の実態などに応じて横断的又は総合的な学習や、児童の興味
や関心等に基づく学習など、創意工夫を生かした教育活動を行う時間として創設した。
2 従って、目標や内容を示さず、ねらいや学習活動の配慮事項のみ示すこととした。
≪ねらい≫
(1) 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決す
る資質や能力を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取組
む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること。
3 学習活動は、例えば国際理解、情報、福祉や健康などの横断的又は総合的な課題、児童
の興味や関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題などについて、学校の実態
に応じた学習活動を行うこと。
4 各学校におけるこの時間の名称は、各学校で適切に定めること。
≪学習活動上の配慮事項≫
(1) 体験的な学習、問題解決的な学習を積極的にとり入れること。
(2) グループ学習などの多様な学習形態、全教師が一体となった指導体制など工夫する
こと。
(3) 外国語会話等を行うときは、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣
れ親しんだりするなど、 小学校段階にふさわしい体験的な学習とすること。
5 これまで45分常例の授業の1単位時間の弾力的な運用を考慮して 各教科の年間授業時数
を確保しつつ、児童の発達段階及び各教科等の学習活動の特質を考慮して、各学校が適切
に決めることができる。
6 指導計画の作成等に当たって考慮すべき事項。
(1) 合科(複数の教科にまたがる)的あるいは関連的な指導を第3学年以上で行える。
(2) 課題選択や自己の生き方を考える機会を充実する。
(3) 個に応じた指導を充実する。
(4) 特殊学級又は通級による指導を充実する。
教師間の連携に努力、効果的な指導。
(5) コンピユータ等の情報手段を活用する。
(6) 開かれた学校づくりを一層推進する。
地域社会との協力関係、学校間交流、障害者や高齢者との交流。
(5) 『学びのすすめ』
確かな学力向上のための2002アピール『学びのすすめ』(概要)
平成14年01月17日 文部科学省
〔本文より〕
1 これからの社会を担う児童生徒が主体的創造的な生きていくため、一人一人の児童生徒に「確かな学力」
を身に付けることが重要となる。
2 自ら学び考える力、学び方やものの考え、問題の解決や探求に主体的・創造的に取り組む態度などを育成
することをねらいとして、総合的な学習の時間を新設した。
3 経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」(2001-12実施)の結果我が国の生徒
「宿題や自分の勉強をする時間」は、参加国中最低であること。
4 最も高いレベルの読解力を有する我が国の生徒の割合は、OECD平均と同程度にとどまっている。
5 新しい学習指導要領のねらいとする「確かな学力」の向上のため、指導に当たっての重点等を明らかにし
5つつの方策を次ぎのとおり示す。
(1)きめ細かな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける。
小人数授業・習熟度別授業など、個に応じたきめ細かな指導の実施を推進し、基礎・基本の確実な定着
や自ら学び自ら考える力の育成を図る。
(2)発展的な学習で、一人一人の個性等に応じて子どもの力をより伸ばす。
学習指導要領は最低基準であり、理解の進んでいる子どもは、発展的な学習で力をより伸ばす。
(3)学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高める。
総合的な学習の時間などを通じ子どもたちが学ぶ楽しさを実感できる学校づくりを進め、将来子ども
たちが新たな課題に創造的に取り組む力と意欲を身に付ける。
(4)学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身に付ける。
放課後の時間等を活用した補充的な学習や朝の読書などを推奨・支援するとともに、適切な宿題や課題
など家庭における学習の充実を図ることにより子どもたちが学ぶ習慣を身に付ける。
(5)確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する。
学力向上フロンテイア事業などにより、確かな学力向上のための特色ある学校づくりを推進し、その
成果を適切に評価する。
1 各学校の取組
(1)ねらいを着実に実現するため、児童生徒の学力状況を十分に見極め、その改善に向け、積極的
に取り組みを考えて欲しい。
(2)各教育委員会は、5つの方策の趣旨を十分理解し、 例えば学校外の人材を積極的に学校に導入
し、学習指導の補助などを行うことができるようにするなど、各種の支援策を講ずるとともに、
各学校に対する指導・助言を行って欲しい。
(3-1)5つの方策の1
・国が定めた授業時間数は標準であり、学校の実態に応じて柔軟な時間割を組む。
・小人数授業や習熟度別授業など個に応じた指導を大幅に取り入れる。
・小学校において、教員の得意分野を生かした教科担任制を導入する。
(3-2)5つの方策の2
・学習指導要領の内容を十分理解した児童生徒には、教材や指導方法を工夫するなどして、
積極的に発展的な学習に取り組ませる。
(3-3)5つの方策の3
・総合的な学習の時間と教科等との関連を工夫しながら、学びへの意欲を高める。
・実社会での生きた知識や経験に触れる機会を増やすため、積極的に社会人を活用する。
・例えば、一定冊数の読書、英検、数検、漢検、TOEFL、運動会や作品展示会における具体的
な目標の設定など、分かりやすい目標を立てて取り組ませる。
・達成した児童生徒を誉め、結果を適切に評価し、学習意欲を高めるための取組を工夫する。
(3-4)5つの方策の4
・放課後の時間などを活用し、補充的な学習や児童生徒の主体的な学習を支援する。
・朝の読書など、始業前学習を推奨・支援する。
・宿題や課題を適切に与えることなどにより、家庭における学習の充実を図る。
(3-5)5つの方策の5
・全ての学校で自己点検・自己評価を実施し、教育課程や指導方法の改善の工夫を行う。
2 学校の取組を支援するための国の施策
(1)2001年度に策定した「21世紀教育新生プラン」を更に推進する。
(2-1)5つの方策の1
・基本的教科(例えば、小学校では国語、算数、理科。中学校では数学、理科、外国語など)に
おいて20人程度の小人数授業を可能とする教職員定員改善計画を着実に実施する。
・教職10年を経過した教員に対する新たな研修制度を創設し、個々の能力、適性等に応じた
研修を実施するなど、考えるプロとしての教員の資質向上を図る。
・「新世代型学習空間」(注1)など、小人数授業などを実施するための学校環境の整備を促進
する。
・教員免許制度の改善などにより、小学校において中学校や高等学校の教員が教えることを含
め教員の得意分野を生かした教科担任制の導入を推進する。
(2-2)5つの方策の2
・教師用参考資料を作成し配布する。
・教科書に発展的な学習に関する記述を可能にする。(次期の小・中・高等学校の教科書検定)
・教科書会社などと協力して、発展的な学習で用いる教材の開発・作成を進める。
・スーパーサイエンスハイスクール(注2)やスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・
ハイスクール(注3)を創設する。
(2-3)5つの方策の3
・総合的な学習の時間を活用して学習意欲を高めるため、実践事例集を作成する。
・科学技術・理科大好きプラン(注4)を実現する。
・社会人の持つ豊富な経験を積極的に学校において活用するため、学校いきいきプラン(注5)
などを推進する。
・科学研究費補助金(注6)で、学習の意欲を高める方法についての研究を推進する。
(2-4)5つの方策の4
・学校いきいきプランなどにより、学校における社会人の活用を推進する。
・子どもたちが読書に親しむ機会を充実し、読書の習慣を身に付けるよう、学校図書館図書資料
の計画的な整備を図る。
・博物館、美術館をはじめ地域の様々な施設等における学習活動など、体験的な学習機会の
充実を図る。
(2-5)5つの方策の5
・各学校における自己評価を制度化し、学校の自己点検・自己評価の実施を促進する。
・文部科学省が実施する全国的な学力調査の問題を学校に提供し、各学校においてこれを利用
した取組ができるようにする。
・学力向上フロンテイア事業(注7)などにより、確かな学力向上のための教材等の研究開発や
効果的な指導方法等の実践研究を推進する。
・教育情報ナシヨナルセンター(注8)において、優れた実践を行っている学校の取組等について
の情報を収集し、インターネット等を通じて全国に紹介する。
・確かな学力向上の成果を適切に評価するため、具体的指標を導入し、国民にわかりやすく説明
する。(習熟度別指導の実施状況、授業の理解度、数学・理科が好きな児童生徒の割合、学校
における読書活動の取組状況など)
別 紙
注1 新世代型学習空間
IT授業や小人数授業など、「学び」のかたちの変化に対応するため、普通教室・特別教室に続く第3の 学習スペースとして整備される教室。校内LANや情報対応仕様を備え、移動間仕切りによる自由空間構成等 が可能。平成13年度より同教室について国庫補助を実施している。【金額の記述無し】
注2 スーパーサイエンスハイスクール
高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキユラムの開発や、大学や研究機関 等との効果的な連携方策についての研究など、科学技術・理科、数学教育に関する研究開発を行う学校。
【平成14年度政府予算額(案) 約7億2700万円】
注3 スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール
英語教育に重点を置いたカリキユラムの開発、一部の教科を英語によつて行う教育、大学や海外姉妹校と の効果的な連携方策など、英語教育に関する研究開発を行う学校。
【平成14年度政府予算額(案) 約8100万円】
注4 科学技術・理科大好きプラン
科学技術創造立国の実現を目指し、将来の我が国を担う科学技術系人材の育成を推進するため、スーパー サイエンスハイスクールの指定等、科学技術・理科教育の充実のための様々な施策を総合的・一体的に推進す る構想。【平成14年度政府予算額(案) 約57億万円】
注5 学校いきいきプラン
多様な経歴を有する社会人を全国の学校に3年間で約5万人を目標として導入する構想(目標年度は平成 16年度)。これらの社会人の知識や経験を学校教育活動における幼児児童生徒の指導等に活用することによ り、学校教育の一層の活性化と一人一人に目の行き届いた教育の実現に資するとともに、地域社会に開かれた 学校運営の実現と社会全体で学校を支える態勢づくりに資することを目指す。財源としては、平成13年度補正 予算で措置された緊急地域雇用創出特別交付金が充てられる。【金額の記述無し】
注6 科学研究費補助金
我が国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まで、あらゆる分野における優れた独創的・ 先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする研究助成費。大学等の研究者又は研究者グループが計画す る基礎研究のうち、学術研究の動向に即して、特に重要なものを取り上げ研究費を助成する。平成14年度には 特別領域研究に「新世紀型理数系教育の展開研究」を設定し、学習意欲を高めるための方法等についての研究 を推進する。【金額の記述無し】
注7 学力向上フロンテイア事業
全国47地域において、「学力向上フロンテイアスクール」を核として、発展的な指導、補充的な指導の 一層の充実や小学校における教科担任制の実践的研究など確かな学力の向上のための取組を実施し、その成果 を全国小・中学校に普及する事業。また、個に応じた指導のための教師用指導資料の作成や、教科書会社など との協力による「自ら学び自ら考える力」の育成のための教材開発を行う。
【平成14年度政府予算額(案) 約5億万円】
注8 教育情報ナシヨナルセンター
学校教育や生涯学習における情報化の推進・情報教育の充実を全国的な視野から支援するためのネットワ ーク上の拠点として、平成17年度を目標に、ナシヨナルセンターとしてのさまざまな機能を整備することとし ており、基本となるサイトを平成13年8月に開設した。(http://www.nicer.go.jp/) 各種教育情報データ ベースにリンクして、有用な情報を検索できるようにするとともに、インターネツトを通じた学習・指導に資 するような教育コンテンツ提供システム等の開発、運用を行うなど、教育情報を総合的に提供する。
【平成14年度政府予算額(案) 約1億6200万円】