
La Movado N-ro 539 (jan. 1996) 掲載記事(一部表現修正)
エスペラント教材に関する調査報告書を活かそう
エスペラント伝習所須恵 橋口成幸
表題の報告書が手元に届き、 一読してその価値を認めたのは私だけではないと思う。KLEG教育部に心から感謝し、若年層へのエス語普及を主に、効率的で適切なエス語学習を探求する者の一人として
報告書を役立て、いくつかの私見と提案を述べてみる。
●アンケートの結果について:
①調査での入門・初級・中級の位置づけは、各エス会で同じだったか。”Ĉu vi parolas esperante? ” と
LUKとを同じレベルで扱って問題はないのか。
②回答集約は3月4日(60通)以降6通のみだから、早めに分析し報告書を出せば、各エス会のさら
なる意見を収集し、日本大会分科会で十分討論できたのではないか。
③指導重視項目に「書く(日記・文通等)」という項目が、なかったのはなぜか。
④エス団体一覧表に、小学校の活動クラブやそれに準ずるものが漏れていないか。
⑤「あとがき」で過度の解釈や分析を避けているのは適切だが、各種の要望・質問等への対応はどう
だったのか。
●報告書での要望:
①基本的な構文を覚えるために有効な暗証文集に、FRAZARO... (HUKUTA Masao 朝明書房)がある。
②短期間で終えられる教材には「20のポイントで学ぶ国際語エスプラント入門」(坂直、JEI)が
ある。既存のテキストから10回で終了する講習カリキュラムを作成する努力が指導者側に欠けては
いないか。
③子供・中高校生向けの教材として最適と考えるものに ”Ĉu vi parolas tendare?”がある。今回のアン
ケートにも回答したが、報告書には記載されていない。
④中級教材のLINGVAJ RESPONDOJ (L.L.Z) 使用率は45%、未使用者23名、無回答23名となっている
が、必ず副教材に入れるべきだと考える。
●その他の要望:
①ビデオ教材は ”Mazi Gondlando” が作られ、高価だが日本でも購入できるはずだ。
②KLEG教育部の中に教材センターを設置し、既販売の全教材を取り揃え、地方エス会や個人が作成
した自主教材を、全て収集する(関係者が一部贈呈)。 教材リストの配布やコピーの提供(勿論有
料で)。KLEG事務所でも閲覧できるように。
●まとめとして:
①私のように、色々な意見や提案を持つ人たちの考えを、もっと収集してほしい。
②エス人口を増やすには、入門講座の前段階として普及講座〔2~4時間)が必要だ。エス界の歴史
や現状を概略紹介し、小説や物語の一節を抜き出して、発音・文法・和訳等を書き入れ解説した小
冊子があればいい(例えばJEIの「素晴らしい言葉の新世界」改訂版で一部 100円以下)。
③予定通り終了しない講座は達成感がないから、講座内容を簡単にし、余裕のある人は易しい読み物
を、辞書を手に読んでもらう方が良い。
④講師不足は能力者がいないのではなく 長時間・期間の束縛に対応できないことにある。複数講師体
制をとる地方エス会もあるが、1ヶ月程度の講師担当なら何とか出来る人も増えると思う。
⑤ひとつの言語を数ヶ月の入門講座で理解させようというのがもともと誤りで、エス語の存在意義を
伝達し、エスペエラントの世界に関わりを持ってもらうのが重要だ。
⑥エス語の実益を体験させる工夫が欠けている。私個人の経験では、早い時期から行うの海外文通は、
語学力向上にとって大きな支えになった。
以上は個人的な意見だが、今後のKLEG教育部の積極的な取り組みを期待する。