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 ★ 新しく取り入れられた『総合的な学習の時間』のことを『総合学習』と読んでいますが、誤解を招いています。
 ★ 『総合的な学習の時間』は自ら考え、生きる力を育てることを基本にしています。
 ★ 学校・家庭・地域が一体となって子供たちの教育に関わりを持とうとするものです。
 ★ しかし、一般の国民はその概要さえも理解していないというのが実態です。
 ★ 教育現場である学校の教師も理解不十分なのか、具体的な施策に苦慮しています。
 ★ 例として、国際理解や交流・情報通信・環境や福祉などがあげられていますが、これ以外のテーマも可能です。
 ★ この運用は、全て学校長の責任で行って良いことになっています。
 ★ 「国語」や「数学」のような教科として学習するのではありません。
 ★ 到達点を設定した評価は行わず、学習態度や取り組み過程を重視します。
 ★ 児童・生徒の一人ひとりが、自分の意思でテーマを決め、取り組むのが本当の形です。
 ★ 物事を自分で解決する力の養成に重点を置くことになっています。

   1.『総合的な学習の時間』の位置付け

   2.『総合的な学習の時間』の取り組み方(私案)

   3.国際語利用と『総合的な学習の時間』

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 1: 『総合的な学習の時間』の位置付け

 学習指導要領(総則編)では、次のことが望ましいと記述されています。

 ・各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫し、特色ある教育活動を展開できる時間を確保する事であり

 ・問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成し

 ・国が目標、内容等を示す各教科と同様な位置づけは適切でなく、内容の規定は行わなず

 ・高校では、学習成果が満足できるものには単位を与え

 ・課程の具体的名称は各学校が定め

 ・小学校で国際理解教育の一環として外国語会話等を行うときは、次のように扱う。

 ・学校の実態に応じ外国語に触れたり外国の生活や文化等に慣れ親しんだりするなど児童にふさわしい体験的な学習活動

  をする。


   講演「開かれた学校づくりと地域社会」(2001-11-17)のため、須惠町へ来られた寺脇研氏(文部科学省事務次官)

   へ手渡した資料を紹介します。

 1-1.私の基礎知識

   (1) 新教育の審議会答申(一次)(二次)
   (2) 文部省発行学習指導要領解説・総則編 H10年12月 (小学校)(中学校)
       時事通信社発行高等学校学習指導要領 H11年3月告示 (高校)
   (3) NHK-TV「日本の宿題・学校」  (ビテオあり 5-12回)
             「こんな学校に行きたい」(1-4回 + 教育の世紀)
             「真剣・10代しゃべり場」
   (4) 私が読んだ関係図書
      ・「教科書のない学校」     小松恒夫著 復刊
      ・「21世紀へ教育は変わる」  寺脇 研著
      ・「対論 教育をどう変えるか」 寺脇 研著
   (5) HPで「総合的な学習の時間」への私の理解・意見を発表、「総合的な学習の時間」を知ろう会を呼びかけ

       中 (2001-11-21新聞掲載)

 1-2.確認しておきたい事項

   (1)「総合的な学習の時間」における「総合」の意味(位置づけ)
      ・生涯学習の出発点(芽をのばす機会を与える)という位置づけ
      ・アメリカで実施されているチャータースクール(カリキュラム)の考え方と同じ視点
      ・多岐にわたる児童生徒のニーズ(関心事・学習心)
      ・理念(基本姿勢)は、学校側が決めたテーマ(環境・国際理解)を児童生徒に選ばせるのではない

 1-3.私の提案事項

   (1) 各学校空き教室(2室)の住民への開放
      ・目的  児童生徒とのコミュニケーションの場を日常的に設ける(現場重視=接点)
            作品の展示 体験指導 話し合い(雑談) など
            児童生徒との接触の場所を住民に与える。  運用管理などは住民に任せる
   (2) 21世紀の新教育をひろく国民にPR
      ・目的  現在の問題点への理解を積極的に促す。
            NHK-TV放送の「日本人の宿題・学校」(全12回)を全学校へ無料配付
            国民の希望する者には原価販売(テープ6巻と送料で5000円程度:ボランティア活動)
   (3) 経験学習から抜け出した体験学習
      ・目的  どんな行動にも、そのための何らかの理由がある。  受入れ側の認識と理解も必要
   (4) 各学校へ使用料無料電話回線を設置(例:100名当たり1回線、最低2回線)
      ・目的  IT革命への布石をすすめる。
            もっと自由にインターネットできる環境  旧型パソコンでも構内・室内LANは構築可能
            (企業が使用していた旧型パソコンは、次々に捨てられている)
   (5) 空き教室で寮施設
      ・目的  外国姉妹校などとの交換留学を促進する
            特にアジア地域の同世代の人々との接触は、広い視野を育成

 

  以上から私の理解では、「学校自体が考案したユニークなテーマと指導方針のもと、 生徒の自発的な取り組みを支援す

 る姿勢で、学校長を責任者とし率先して展開して欲しい」というものが、『総合的な学習の時間』設定の根底に示された

 考えだと受け取れます。


 2: 『総合的な学習の時間』の取り組み方(私案)

 

  1999年から2000年にかけて、私が訪問した居住地周辺4町の中学高校あわせて14校で、 学校長や教頭に面会しお話を

 聞いた限りでは、具体的な取り組み展望を明確に持たれた学校は、残念ながらひとつもありませんでした。
  それでも三年前に先行実施した学校等(訳100校)では、地域の社会人の生涯学習の外国語学習に参加して体験学習した

 り、 地域在住の外国人を学校に呼んで話しを聞いたり、というのもありました。
  校外講師として呼ぶ場合には、十分な謝礼金を出せないと、あきらめている学校もありました。
 元文部省から示された取り組み事項(例示)にそった活動を展開しようとしている学校が、2000年度には現れましたが、

 どの学校においても「環境問題」とか「国際交流」とかに絞ったものばかりでした。
  このことは、『総合的な学習の時間』設定の基本理念を十分に理解されていないように私には感じられました。
 そこで私は、次のような取り組み姿勢を提案してきました。

 

 2-1.正しい取り組み方

      〔規則〕 取り組みの内容・結果などは活動記録簿(仮称)に記録し担当教師へ提出する。

 

  第1段階:〔生徒へのアンケート集約とその結果の公表以外、教師は意見を一切出さない〕

 ・「興味」「もっと知りたいこと」「やってみたいこと」「得意なこと」などについて全生徒からアンケートをとる。
 ・アンケートを基に、同じ趣味の生徒たちのグループを作る(例えば数人でも1グープとする)。
 ・学年別にせず全学年とおしたグループ作りをする。
 ・自分で趣味や関心事を出せなかった生徒には、活動を始めたグループの見学を勧め、関心があるものを選択させる。
 ・それでも選べない生徒には、教師が個別面談のうえ、適当と思われるテーマを示し選ばせる。
 ・どうしてもテーマが決まらない生徒には、1年間かけて教師と一緒にテーマ探しをする。
 ・各グループの中で話し合い、リーダーを選び、何にどのように注目するのか、テーマを全員で決める。
 ・リーダーの選出は、単に人気選出ではなくて、リーダーがしなければならない役目などを教師が明確に示す。
 ・具体的にどんなことをしたらよいか、全員で意見を出し合う。

    教師が与えたテーマでは、生徒の自主性は育成されない。
    生徒自身が興味を抱いたテーマこそ、熱心に最後まで取り組める。
    テーマによっては生徒の中に、大人以上に知識のある者もたくさんいる。

 

  第2段階:〔生徒からの相談があるか、生命に危険が及ぶと推測される行動以外には教師は意見を出さない〕

 ・行動計画に基づいて、誰がどのような事をするのか分担を皆で決め、注意点を洗い出す。
 ・テーマに関して詳しい情報が必要な場合でも、とりかかり方法は生徒たちが決める。
 ・地域や専門団体の支援が必要でも、その所在を探す方法の助言にとどめる(例えば「電話帳で調べたら」等)。
 ・直接相手への折衝は生徒に行わせる。
 ・取り組みで失敗した事など、反省点を皆で出し合い、次の対策を検討させる。

    この繰り返しが、自立学習につながる。
    教師も自分が得意な分野のグループ担当教師(後見人)になる。
    活動記録を基に担当教師が知らないことは、知っている教師の応援を受ける校内支援体制をつくる。

 

  第3段階:〔適当な時期(最低各学期毎に1回)に、取り組みの発表会を一日授業を止めて開催する〕

 ・壇上での発表ではなく、教室を割り当てて使用させ、生徒は自由に巡回見学できる。
 ・他グループとの比較は、取り組みへの刺激になるが、決して競争に発展させてはいけない。
 ・三学期では、残った部分を急いで仕上げるのではなく、一年間の取り組みを振り返ってまとめる。
  (反省点や、印象深かった事や、ためになった事や、どうしても疑問が残った事など)
 ・生徒それぞれが思い出して発表し、皆で意見を出し合い、ひとつの結論を出すのではなく、グループ全員で考える。

    次回に別の何かに取り組むときに、どんなことに気をつければ良いか、自分の言葉で確認する。
    より間違いの少ない方法を取るには、どうすれば良いのか考える。
    生徒の一人一人が自分の能力と感性で知ることが、最も大切だということになる。


2-2.取り組みに当たっての留意点

 

 ・テーマの決定や具体的な取り組みの発案は、生徒(生徒たち)自身がしなければならない。

 ・教師は「生徒の行動を見守る」ことに終始し、相談を受けても解決策を示してはいけない。

 ・生徒の生命危機に関すること以外は、誘導行為を一切しない。

 ・学校外の助言者が必要な場合でも、その所在を教えるのではなく、調べる方法を助言する。

 ・テーマが完結しない事が問題ではなく、取り組み方法を考え出せなかったことが問題である。

    失敗を多くしたグループほど、結果として自主性の育成に役立ったことになります。
 

 3: 国際語利用と『総合的な学習の時間』
 

 私は25年前に働きながら通信講座で国際語エスペラントを学びました。その後全く面識のない外国の人達と文通をした 結果、たくさんの絵ハガキを受け取り、いろいろな国の人々の考え方も知りました。
国名をあげれば、中国・韓国・パキスタン・ベトナム・イラン・イラク・イタリア・スペイン・ポルトガル・ オランダ・ベルギー・ハンガリー・ユーゴースラビア・ポーランド・西ドイツ・東ドイツ・チェコ・スロバキア・スイス・ フランス・イギリス・リトアニア・エストニア・ラトビア・ソビエト・アメリカ・カナダ・ブラジルなどです。
 通信講座で独習し、海外文通や読書で勉強し、ほとんど会話をした経験のない私の使用するエスペラント語が本当に通用するのか確かめるため、 1997年に、ビザ取得や宿泊所の確保など全ての旅行計画を作成し実務を行って、一人でドイツの4都市と世界大会が開催されるチェコの首都プラハへ、 エスペラント語の仲間を訪ねて旅行した経験があります。


    この国際語エスペラントを活用して、次のような『総合的な学習の時間』のお手伝いができます。

3-1.テーマの設定

   前述 2- 2(2)で取り組みの留意点を述べましたが、次のような助言や取り組みの手助けができます。
   (※ 生徒の自主性育成を支援するものなので、国際語への翻訳以外は直接手伝いません)

  環境問題

       ゴミ問題・交通渋滞問題・緑化促進・公害など外国の実態を知る

       (過去や現在の問題点、どのような方法で解決したかなど)

  国際問題

       戦争被害の実態・実害を知る

       (困窮の度合い・当事国の言い分・避難民の生活・災害地支援状況など)

  情報通信

       パソコンの利用実態を知る

       (学校での利用・公共施設での利用・電話掛け方の違いなど)

  個人趣味

       趣味の充実を図る

  

       (本・パンフレツト・絵ハガキ・切手の交換など)

  イベント

       開催地でのニュースなど

 

3-2.エスペラント語学習の問題点

 ・ エスペラント語学習は  《ひとつの道具を身につけることに過ぎない》 ことなのです。
 ・ 言語学習を中心に置いた指導は行いません。
 ・ 英語学習との混同を指摘する方が多くいますが、ベルギーやオーストリアなどは自国語がなく
   各地方毎に近隣の国語を学んでいます。
 ・ 陸続きの外国人は数カ国語を生まれたときから身につけながら成長して行きます。
 ・ そのような環境に日本人は慣れていないだけで、言語学習能力が無いのではなく、年月が解決するでしょう。

   国際語エスペラント使用の利点は、 世界中の人々と容易に情報交換や交流ができることです。


3-3.取り組み評価のための記録

 ・ 前に述べましたように、活動記録簿(仮称)を基に、生徒の相談に応じます。
 ・ 生徒個人の取り組み把握は、担当教師が行うことになります(顧問としての報告は可能です)。


3-4.その他可能な支援

 ・ 国際語エスペラントを使って知り得た外国の生活や情報の紹介。
 ・ 来日エスペラント仲間を案内して学校訪問。
 ・ 学校文化祭での国際語エスペラント語に関する展示支援。
 ・ 海外姉妹校との交換留学や、お互いの国への交流旅行の仲介言語として簡単な会話指導。
 ・ 海外の同世代の人たちとの文通・交流指導。

 

3-5.国際語授業後の生徒アンケート

 国際語授業後の生徒アンケート回答と一言感想の一部を紹介します。

     質 問 A:国際語について理解できましたか      (1:理解した 2:大体わかった 3:よくわからなかった)
         B:エス語は簡単だと思いますか          (1:非常に簡単だ 2:簡単だ 3:普通だ 4:難しい)
         C:エス語は面白そうだと思いますか       (1:面白そう 2:そうでもない)
         D:エス語をもっと知りたいですか         (1:学習してみたい 2:話を聞きたい 3:そうでもない)
         E:外国に興味がありますか            (1:非常にある 2:ある 3:ない 4:まだわからない)
         F:ひとりで外国に行ってみたいと思いますか     (1:思う 2:思わない 3:まだわからない)

 ABCDEF              感 想    ・    意    見

 111223  英語と比較してみてとても簡単だった。こんな国際語が 110年以上もあったと聞いて驚いた。
 221223  初めて聞いてとても面白い言語だと思った。機会があれば勉強したい。
 222242  名詞や目的語(・・・を)の見分けが付けやすく、思った以上に簡単だったと思う。
 341113  一時間(約40分)だけでよく理解できなかったので、もっと学習したいです。
 122242  ローマ字の発音と似ているので読みやすかった。
 211223  動詞の活用や不規則な変化が無いので、とても簡単だと思いました。
 221222  簡単だった。話を聞いていて面白いと思いました。
 121111  実際に話を聞き、とても貴重な言葉だと思いました。
         これから、色々な所で使われていけるように、今日習った言葉を大切にしたいと思います。
 331322  難しかったけど楽しく授業ができました。
 121223  単語は難しいけど発音などは思ったよりも簡単で、けっこう関心が持てました。
         このように簡単だったら国際語になっても使いやすいだろうと思いました。
 121113  初め何を話しているか分からなかったけど授業していくうちにだんだん言葉が分かってきました。
 221211  英語は苦手だけどエスペラント語の方が簡単でよかった。
         授業で初めて知ったけど、もっと世界にひろがればたくさんの人と話せそう。
 221122  単語などを覚えたら簡単そうだなと思いました。
 111213  初めて学習したけれど思ったよりも簡単で、すぐに身につけられそうです。
         エス語が国際語になって、もっと使われたらいいと思います。
 121213  今日は初めて英語と日本語以外の言語を勉強して楽しかったです。
         もっと話を聞きたいと思いました。
 231222  今まで聞いたこともなかったので、いろいろ知れて良かったです。楽しくできました。
 221111  初めてエスペラント語を聞いて、規則正しいから分かりやすいと思いました。もっと勉強したい。
 231222  初めてエス語を勉強してみて思ったよりも簡単だなあと思いました。
 111211  初めて聞いて、勉強して良かったです。
 222213  エスペラント語は覚えれば簡単だと思いました。
         そして国際語のことが大体分かったので良かったです。
 221121  自分が思っていたほど難しいものではなかった。
         意外に楽しいものだったので、今後機会があれば習ってみたいと思った。
 111111  意外に簡単なので少し勉強すればすぐに覚えられると思いました。
 121211  英語よりとても簡単だということが分かった。
         これなら英語よりエスペラント語を勉強したいと思う。
 221242  英語より簡単で分かりやすかったです。
         はやくエスペラント語が国際語になればいいなと思いました。
         そうすればエス語を勉強して、世界中の人と話せるようになれるからです。
 232242  エスペラント語を少し話せるようになったので良かったです。

 

    ・ エスペラント語は英語に比べて簡単だと感じた生徒は90%に達しました。
    ・ もっと話しを聞きたいと思った生徒は70%もいました。
    ・ エスペラント語を学習してみたいと思った生徒も50%以上いました。


    ・ 学校ではなぜ国際語を勉強しないのだろうか、という疑問を持った生徒もいました。
    ・ 1年生のときから国際語を習いたかったと、不満を語る生徒もいました。

 

 

 

 教育情報(試作):「総合的な学習の時間」の分析とエスペラント語学習の提案

 

「総合的な学習の時間」についての正しい理解と取組みに関する分析と報告です。

 計画される100時間は、学校や教師に与えられたものではなく、生徒の一人一人に与えられた時間だということを、指導者は絶対に忘れてはなりません。

「総合的な学習の時間」の失敗は、教育機関特に現場の学校で実施する方法を見つけられなかったことが、その原因でした。         ​作成者:エスペラント伝習所須恵 橋口成幸

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